第2章 WOODYヨットのエンジン  更新2015.5.12

WOODYヨットはセールドライブだけなのか?

WOODYヨットはアマチュア自作で建造したWOODY90の1号艇以外は、全艇セールドライブにしています。
プロに転向して最初に採用したのが、セールドライブです。
理由は下記の通りです。

シャフトドライブと何が違うのか?

実働馬力が1割近く違います。 シャフトのロスが無く、喫水ラインに対し水平ですが、シャフトドライブは必ず斜め下方向に出ていきますので、水力は減少されます。
シャフトドライブは基本的にパッキンを使うためビルジが有りますが、セールドライブは全くビルジは発生しないのです。
最近はメカニカルシールが発明され、ビルジの侵入の無いシャフトドライブも有りますが、旨く作用した艇も有れば全くだめな艇も有るようで、なかなか難しいようです。
私も何艇か取り付けたことがありますが、1つ間違うと大量の海水の侵入が有りますので、やはり怖い気がします。
特にシャフトを痛めるような事故に遭うと浸水は防げないのです。

セールドライブのもう1つの大きな採用理由

セールドライブにした1番の好結果はバックのスピードと舵効きでした。
殆どのヨットはバックが効かないため、超低スローで着岸するため、横風の影響をもろに受けてしまいますが、WOODYヨットはバックの機走力が6ノットも出る力があるので、漁船やモーターボートのような着岸が可能になりました。
前進も後進も殆どヨットは横に振られることもなく、機走でも殆どティラーを持ちません。
スケグやラダーとの距離があるので、後進力は群を抜いています。 バックの効きは水流を乱す物が後ろにないためで、FRP製ヨットでもセールドライブを使ってるヨットは、後進での推力と舵効きはすごく良いようです。

何故未だにシャフトドライブが多いのは何故か?

これは私にも良く解りませんが、1つ考えられることは、エンジン本体の価格差が影響しているようです。
FRP製の量産ヨットはブラケット等の設備が、エンジンの購入費よりも安価で出来るからなのではないかと思います。
WOODYヨットのように1艇1艇が手作りの場合、施工費とエンジンの価格差でどちらが安価なのかは不明ですが、価格よりもメリットの方が大きいセールドライブの採用は大きな判断でした。

他の木造ヨットでセールドライブが有るのか?

私の知る限り海外、国内とも無いと思っていましたが、1艇カトギさんの設計した艇で有るそうです

2006.10.21 変更

それは何故なのか?

基本的にはやはりセールドライブを取り付ける技術と経験でしょうか。
プロ第1号艇のWOODYヨットを建造するとき、設計者の横山晃氏から、「セールドライブは止めましょう」と連絡が有りましたが、「これからの時代絶対セールドライブだから、もし木造ヨットに搭載出来ないなら、大きなリスクとなり、WOODYは売れない」と連絡したところ、セールドライブの取り付け図面が送られてきました。 しかし図面を見たときに、これでは施工は無理と判断し、独自に研究、開発、改良して、今の取り付け方式を確立しました。
残念ながら横山氏のセールドライブ取り付け図面は使用できませんので、1艇だけ8.2mでセールドライブと書いてある図面が有りますが、使用しないで下さい。
このドライブの取り付け方法は現在でも細かくは記載していませんので、直接私にご連絡下さい。 今年ツボイヨットさんの30Fケッチをセールドライブに改造しました。 この経験から古い艇でもほぼ100%改造が可能と判断します。

2006.10.21 追記

セールドライブに事故は無いのか?

海外、国内とも事故はゼロのようです。
よく心配されるのが、ドライブを吊り下げているゴム板の劣化ですが、8年経過したドライブのゴムを今年初めて交換しましたが、全く劣化した様子は見受けられませんでした。
ボルボは実際6ノットでドライブをぶつける試験をしていますが、全く浸水等は無いそうです。
2回間違ってドライブ部分でヨットをスリングで吊ってしまった事がありますが、全く影響は有りませんでした。 今年15年以上経過した2003が搭載されていましたセールドライブのマウントゴムを交換しましたが、燃料ホース当はかなり劣化が激しかったのですが、直ぐにトラブルが出るほどは劣化は見られませんでした。 他にWOODYヨットも2006年に11年経過したドライブを交換しましたが、殆ど劣化は見て取れませんでした。

2008.2.1 追記

FRP製ヨットに比べて技術的な問題点は?

木造艇は、、強度がより強い理由でもある、 センターにキールと言う大切な部材があります。 そこの真ん中にドライブユニットの通る20×14cmの大きな穴を開けるため、キールが前後に分断されるほどの大きさが必要です。 そのためキールが損失したような状態になることに、恐らく設計者も他の造船所も決断できない大きな理由と思います。
ストリッププランキングも、コールドモールドも、殆どの木造艇で最も接続が難しく、又影響を受けやすいのが、このキールとハルの接続点です。
又この部分にはビルジを流すためのリンバホールをフロアー材(フレームとキール、ハルをつなぐ部材)にも開けていますので、一体で強度の強い積層角材の横に細い外板を張り付けるのですから、この部分でで影響が出やすいのも事実です。
しかしビルジの流れを遮らず、ハルも、キールも強度を落とすことなくエンジンベッドを取り付けているのが、WOODYヨットです。
すでにWOODYヨットで最も古いセールドライブ艇は11年を経過していますが、ドライブ部分には全く問題は発生していません。

補強はどのようにされているのか?

実際の施工方法を細かくは説明できませんが、キールの薄くなっている部分には、さらにキールの幅を広げるように補強材を入れています。
セールドライブはエンジンとドライブが一体になるようにFRPのベッドが有ります。 このベッドのおかげでシャフトドライブのような芯出しが要りません。
このベッドが実は船体の大きな補強になっています。 まるでインナーハルのような構造で、平板にリブを付けると強度がいっぺんに強くなるのと一緒です。
それでいてビルジがもしエンジン部分より後部で発生しても、すみやかにビルジ溜まりへ流れ込むようになっています。 この技術が足立ヨット造船独自の開発した技術で、FRP艇での応用も十分出来ます。

2006.10.21 追記

セールドライブがセンターに無い

4年前にACTIVE 83に2台のセールドライブを設置した艇を進水させましたが、結果とても面白い事が判明しました。

センターから外れたドライブは明らかに馬力アップしているのです。

理由は バラストを避けているので、乱れていない流水がプロペラの効率をUPしているのだと考えます。

ツインドライブの次に建造した同型艇のWOODY ACTIVE 83 SALON CRUISER はエンジンドライブをセンターより20cm右に取り付けて建造した所、とても回転がなめらかとなり、プロペラは1ランク上のプロペラが取り付けられました。

追記 2014.7.2

MDシリーズからD1シリーズへ

MDシリーズが変更されDシリーズに成った時、1時ボルボからヤンマーの3YMへ移行使用していましたが、Dシリーズも初期の問題は全て解決されたので、再びボルボに戻しました。

ヤンマーの3YMはGMシリーズと比較して格段の進歩でしたが、Dシリーズと比較するとやはり振動、音ともに残念ながら技術の差を感じます。

特に回転数による共振が3YMには見て取れますが、Dシリーズでは全く共振を感じさせるところはなく、オルタネーターの115Aも今の時代には魅力です。

現在工場には3台のD3が有りますが、2台は新艇への搭載で、1台はMD2020からのパワーアップする改造艇に使用します。

ボルボディーゼルはどこまで進化していくのかとても楽しみですが、車と一緒で徐々にコンピューター可していきますので、余り進歩しすぎるのも困った問題です。

 2015.5.19更新